東工大OBでいらっしゃる、博報堂ご勤務の久地楽さんより、アイディア実現会議に対するフィードバックをいただいたので共有させていただきます。この場をお借りして、久地楽さん、本当にありがとうございました。
別記事でも紹介させていただいております。
https://titechrissikai.wixsite.com/home/blank/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E4%BC%9A%E8%AD%B0-%E5%A4%A7%E5%BF%98%E5%B9%B4%E4%BC%9A-%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F
久地楽 雅也 (東工大卒業生 / 株式会社博報堂 勤務)
今回、立志会大忘年会のお誘いを受け、「アイデア実現会議」の最終発表のみを拝聴しました。そして、4つのチームの学生諸君が立てた『志』を、「それはつまり、こういうことではないか…」と、私なりに全力で忖度してみた結果報告と所感を、以下にお届けします。
【1】チーム名:ボーク ・・・・・よかった点:<青春>
コンセプトの「マンネリライフにさよならバイバイ」には、笑えた。(そんなにマンネリで、うんざりなのか?)
マンネリを打破するために、強制的に他者になりきってみるという試みは、合理的かつ健康的でいい。ではこれが、今回目指している「多様性のデザイン」の実現に向かっているかというと、それはちょっとわからない。この発表は、「多様性を援用して、脱・マンネリのコミュニケーションをやってみた」ということではないか。何はともあれ、マンネリを解消したい、多様性だってデザインだって立志会だって、なんでも利用するぞ、と。
それも大いによし。青春は退屈と暴走だ。その振り子から、想定外の何かがつかめるかもしれない(!?)。
【2】チーム名:ものたろう ・・・・・よかった点:<社会に開いた基地>
中心部をハブにして四方に広がる、創造空間としての「秘密基地」は、社会の様々なワークスペースのありかたを考えさせてくれる。多様性のデザインという視点で考えると、このアイデアには、多様な個人が一箇所に集う場というよりも、個人の中の多様性を互いに発見・発揮できる学び場、という意味合いを感じる。ぜひ、ジョン・デューイ著「学校と社会」(岩波文庫)で示される学校空間のキーチャート、第2図・第3図・第4図を参照して、具体的な検討をしてほしい。
秘密基地という仕立ては、私たちの原風景を想起させてくれる。そしてそこに、このチームは、兵法の風林火山という、外に向けた行動様式をなぞらえているところが興味深い。
大学生活に、このような「社会に開いた基地」があるといいのではないか。
そうなると、もはや内輪受けの「秘密基地」ではなく、かといって、通りすがりの「案内施設」でもないはずだ。つまりこの「社会に開いた基地」という構想は、まさに「学校と社会」をつなぐ『立志会』が目指すべき、場づくりのマネジメントを示す一例になっているはずだ。
【3】チーム名:KI・SHOW・TEN・GAI ・・・・・よかった点:<骨太リアル>
学生と商店街とインターンシップという、具体性がいい。このチームは、アイデア実現の中の「実現」に重点が置かれていて、テーマである「身近な多様性」に忠実だった。
表面的には多様な商店街が、実は閉鎖的であるという問題提起は、リアルだ。一方で、学生の方は、マンネリや経験不足が重なり、いつの間にか画一に扱われることに染まっているかもしれない。
そこでこのチームは、学生と企業を繋ぐ「インターンシップ」という方法をアレンジして、解決を試みる。学生にとっては就業体験であり、商店街にとっては雇用体験である。まずは双方で、自分たちの相互体験学習であることを理解する必要がある。
学生の自己認識(画一性の打破)と商店街の問題意識(閉鎖性の打破)が、このプログラムの実践を通じて、どのように生まれていくのだろうか。なかなか難問だが、両者の間に立つ「仲介人」には、異質な両者を互いにそれぞれ自己理解させる、骨太な行動力が問われるだろう。このチームのアイデアで実現したいことは、「人と人による自己理解」。これもまたリアルだ。
【4】チーム名:トムのマイホーム ・・・・・よかった点:<無意識へのおせっかい>
いくつかの発言が、耳に残った。
「多様性はすでに存在している」、「『こうありたい』と『こうしている』の間に、ねじれがある」…など。確かにその通りだ。
嫉妬心が災いになりがちな日本社会において、上手に「おせっかい」を焼ける場所・状況・人間関係を、スムーズに生成できれば、それは隠れた多様性を発掘して、ねじれを克服する土壌になっていくはずだ。
このチームは、多様性とねじれの住処である、無意識の先入観に迫ろうとしていた。問いを深めること自体が、アイデアの実現であるという、根源的なアプローチだった。
結果報告は以上です。
【所感】
こちらで忖度すればするほど、新たな可能性に気づかされました。これは、みなさんが、脈のあるところを探っているからでしょう。その一方で、相手が忖度しなくても賛同が得られるようにしないと、仲間は増えません。ここは課題です。今までの立志会の活動では、頭の中の『志』を自由に発散してきたようです。しかし今回、発散だけでは成立しない「アイデア実現」という取組みでは、浮世離れした絵空事を聞かされている瞬間もありました(失礼!)。
だからこそ今後は、難しいことをシンプルにわかりやすく、「そもそも」「つまり」「何でだろう?」を繰り返し、「相手を理解」して、「手足を動かして考える」ことが大切だと思います。
例えばですが、私の忖度を踏まえるとすれば、<無意識へのおせっかい>で対話する<社会に開いた基地>にみんなを集め、<骨太リアル>なアイデア実現に全員で取組んで、<青春>を謳歌してほしいなあ、と思います。
成長を続ける立志会。これからも期待しています。
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